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    伴名練=編『新しい世界を生きるための14のSF』

     総評。分厚い。14も収録すればそうなるよね、という鈍器的な厚み。そして情報量が多い。収録作品はもちろんのこと、編者の伴名練氏による解説がテーマごとの作品紹介となっており、気になるテーマで挙げられてるの読んどけば間違いなし、指南書的な役割を担っている。SFの今と、そこに至るまでに経緯を知ることができる導入本として、他にない本になっているのでは。私はそんなに読まないのでわかりませんが。
     以下、比較的好きなものについて各作品感想を。敬称略ネタバレあり。

    八島游舷『Final Anchors』
     自動運転AI調停小説。発想が面白いし、やりとりが一秒に満たない時間で行われているというのもうまい。そして政治とか社会背景とかバックボーン匂わせてくる小説楽しい。続きが読みたい。

    斜線堂有紀『回樹』
     じっとり暗い百合だった。破綻していく関係性とか、乾いた感じの結末とか、どん詰まり感がすごくて好み。SF要素そう絡めてくるんだ、という驚きがあった。

    murashit『点対』
     再読。読みながら脳味噌の使われてないところが使われる感じ。このページ数のなかでサラウンドに適応させられていく体験だけでも稀有なのに、さらに後半そこからずらしていくのが秀逸すぎる。えっこれ誰、何読まされてるんだ今、となった。好き。

    高橋文樹『あなたの空が見たくて』
     世界観楽しい。失神した者とか認識されざる者とか良いと思います。そして読後感が爽やかだった。ちょっと全体の印象が薄かったのが残念。

    夜来風音『大江戸しんぐらりてい』
     むっちゃ好き。途中までは長屋だったのに終盤完全に巨大ロボットで、二次元の広がりが三次元に立ち上がってくる感じが最高にアツい。あと人間が単なる計算資源として取りこまれ、人間味を失ったまま部品として動かされていくのリアルでよい。

    天沢時生『ショッピング・エクスプロージョン』
     爆笑した。あー、好き。好きだわ。オマージュが過ぎるだろ。これいろいろ大丈夫なのか? サイバーパンクな世界観、キレッキレのキャラ、小気味よい会話。読んでて一番楽しかった。ジョーク飛ばしてくる車載AIが大好き。某電子マネーカードのもじりのセンスに脱帽した。こういうのもっとください。

    佐伯真洋『青い瞳がきこえるうちは』
     感情を動かされたという意味で本アンソロジートップ。思わず折り目もつけてしまった。X卓球という強いガジェットに身体障碍や難病を絡めて課題提示して、さらに兄弟家族間の葛藤も交え、共感覚でもって昇華するとかSF小説がうますぎる。一瞬が引き延ばされるような描写も素晴らしく、息をのんで頁を手繰った。これはすごい。よかった。

    坂永雄一『無脊椎動物の想像力と創造性について』
     京都破壊系SF。京都破壊系SF? 好き。最初百合かと思ったけど百合じゃ、いやまだ俺キャラって可能性が(以下略)。終盤諦めムードが漂って、課題解決できなかった残念オチかと思ったら、語り手がいい感じにネジが外れてて結果的によかった。作るものの趣味はともかく。しぶとく生きようぜ。

    琴柱遥『夜警』
     物語性、世界観で一番好き。この世界の残酷さも含めて浮かぶ絵が美しい。同時に宇宙の闇をひたすら見続けているような、しんと静まりかえった、意思を持たない恐ろしさがある。よかった。


    JUGEMテーマ:読書感想文

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