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平山瑞穂『ラス・マンチャス通信』

 五つの章から構成される、歪な悪夢のような物語。
 とにかく鬱屈している。各章で、歪んだエピソード、歪んだ登場人物、歪んだ関係性が展開される。読み進めるうちに徐々に非現実的、幻想的なイメージが重なっていき、奇妙な浮遊感と比較的すっきりした不思議な余韻を残して終わる。どの章の結末も、物語はもう続かないのではないかと落ち着かない気持ちにさせられる。それでいてページを捲ると、何食わね顔をして再び歪んだ物語が始まる。歪で幻想的なエピソードが一層ずつ積み重なり、徐々に高さを増し、最終章でクライマックスを迎える。
 最終章まで読んで評価を転じた。悪趣味な映像が好みだったためと、ベタながら主人公の変化にぐっときたためだ。通勤電車内でにやにやしながら、ああこれをあのひとに薦めたいぜひ薦めたいと強く思った。しかしよく考えてみると、もともとがあのひとにオススメされた本だったかもしれない。

読了日:20171112

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    河野裕・川端ジュン一『ウォーター&ビスケットのテーマ1 コンビニを巡る戦争』

    評価:
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     面白かった。どちらかというと物騒な話だけど、登場人物に関するエピソードが丁寧に語られるからか、わりと静かな印象が残った。作中作を引用し合うやり取りが楽しい。タイトルからして話の軸になってくるんだろうけど、あらすじだけでも面白そうでずるい。共著がどう分担してるのか少し気になる。設定、監修と執筆か、それとも作中作と本編とか(さすがにそれはないか)。
     なんともいえず良い終わりかたをしているので早く続きが読みたい。

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      アーサー・C・クラーク『火星の砂』

      評価:
      アーサー C.クラーク
      早川書房
      ¥ 691
      (1978-07-01)

       古きよきSF。ここに描かれている未来は訪れていないが、訪れていないからこそ見える部分がある。SFの古典を読むときはいつもそんなことを考えている。変わりゆくものと変わらないもの、流行する魅力と普遍の価値について。

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        ねじれ双角錐群『望郷』Kindle版

        物語をめぐるアンソロジー。表紙が素敵。

        『物語のない部屋』
        メタ。好きです。アンソロジーや短編集の一作目というのはその一冊を決定づける役割があることに最近気づいた。

        『新しい動物』
        虹鱒かわいい。ビジュアルはシュールだけど、こんなにかわいく描けてしまう文章ってすごいな。

        『二色の狐面』
        のじゃロリ狐ババアはジャンルなのか? 地の文の安定感と会話のテンポが楽しい。スピンオフ的な意味でも楽しかった。

        『組木仕掛けの彼は誰』
        かっこいい。夢中でページを捲ってしまった。辞書文体、AR、人物の配置、キャッチーな単語と隙がない。のじゃロリ狐ババアはジャンル(以下略)

        『ユゴスに潜むもの』
        SF。まさか異星人ものがここにくるとは……。つっこみどころがいくつかありつつも、はらはらしながら読み進めた。

        『香織』
        ポップカルチャー。星とか虹とかラベンダーの香りとか、モチーフの挟み込みかたが秀逸。なかなか真似できないバランス感覚だと思う。

        『器官を失ったスピンドルの形』
        うわーこれ好きだー。冒頭二文で引っ張られ留まることなく。硬めの文章のなかに挿し込まれる「誕生日、おめでとう!」の美しさよ。

        読了日:20171008

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          小林泰三『海を見る人』

           一連の短編からなるひとつの物語……と言ってしまっていいのかどうか微妙なところ。
           解説によれば、描かれている設定が計算可能なハードSFとのこと。私は理系を専攻したくせに計算嫌いの文系脳なので、そのように読むことはほぼない。なんとなく損してるのかなとも思うけれど、たぶん今後もファンタジーとしてしか読まないだろう。
          (これは描きかたにもよると思う。例えば円城塔の幾何学SFは、明確にそれとして読むしかない、読者にそう読むことを強いる描かれ方をしている。物語と論理のバランスをどこにおくか、ひいては何を描きたいか。あとは読者が何を読み取りたいかだと思う。)

          『砂時計の中のレンズ』
          世界の描写でかなり戸惑った。比重が設定に置かれていて、物語面が尻すぼみなのが残念。この一話目を読み終わったとき、正直、久々に読みにくそうな本だなと思った。

          『独裁者の掟』
          よかった。心情描写によって物語寄りになっている。抑圧からの解放の構成がぴったりはまっていて、キャラ配置も好みだった。

          『天獄と地国』
          これもやや世界設定寄りだけど、『砂時計〜』に比べれば読みやすく楽しめた印象。大事なのは結末だろうか。計算しないと損するかもと思った理由は解説を参照。

          『キャッシュ』
          設定とキャラ、語り口が好み。「そんな馬鹿な仕様になっていたのか?」「しかし、それは明らかなバグだろう」のコンボには思わず苦笑いしてしまった。バグの中身だが、さすがに国家的全世界的プロジェクトであればこんなお粗末にはならないのでは。反面、タイムスケールとしてテストしようがなかったのかな、とも思った。

          『母と子と渦を旋る冒険』
          本書が連作としてひとまとめにできるか迷ったのはこの作品のため。あまりに異質、あまりに変態的。どちらかというとホラーとしての、ぞわぞわした楽しみがあった。

          『海を見る人』
          世界設定と物語のバランスという点では、これと後の『門』がちょうどよかった。物語はちょっと男性側に都合がよすぎるかも。

          『門』
          よかった。しかけに気づいた時点で手塚治虫の『火の鳥』を思い出して、不安になりながら読み進めていったのだけれど、きれいに着地されていてほっとした。

          読了日:20170830

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